気がつけば愛でした
「…大変、ご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。」
「…」
秘書課で習ったきれいなお辞儀をして謝る。本当にもう、これしか出来なかった。
「…ほら。」
下げた頭の前に携帯を出され、受け取り、今度はきちんと鞄にしまった。
どうやら、ベッドに運んだ時に携帯が鞄から落ちたようで、静奈が帰った後、ベッドの下から出てきたらしい。
何から何まで…。
自分が情けなく、心の中でため息をつく。
もう一度お辞儀をして玄関に向かった。
「色々とありがとうございました。」
どんなに苦手な奴でも挨拶はきちんとする。これは社会人三年目の静奈には当たり前のように染み付いていた。