気がつけば愛でした



なんで見ず知らずの人にそんなこと言われなくてはいけないのか。


静奈だって泣きたくて泣いているわけではない。 ミスした後だって、泣かないよう、必死に仕事に取り組んだ。

泣いたってどうにかなるものでもない。
泣かないで可哀想に、だなんて言われるほど社会は甘くないってことくらい知っている。

だからこそこうして帰りまで我慢していたのに。


「何なのよ…、なんであんな事言われなきゃいけないのよ。」



何も知らないくせに。

静奈は怒りが湧いてきた

先輩だからって偉そうに。



あれから、あのエレベーターの人物が、営業の高柳律と知る。


入社3年目の営業課期待のエース。

モデル並みのスタイルに整った顔立ち。入社した頃から注目されていたらしく、女性社員の憧れでもあるらしい。


しかし静奈にとっては、あのエレベーターの一件以来、苦手な存在となった。


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