気がつけば愛でした
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「…ん?…ゃん?静奈ちゃん!?」
「あ!ハイ!」
耳元で名前を呼ばれ、ハッとして立ち上がる。
自分のデスクの目の前には社長の姿。
「大丈夫?ボーッとして。体調悪い?」
社長が心配気に顔を覗き込む。
しまった。今は仕事中だった。ボーッとしているところを社長に見られてしまったのだ。
上司にそんな姿を見せるなんて。
弛んでいるにもほどがあるだろう。
「も、申し訳ありません!何でもありませんから。」
「ならいいけど?」
はい、と書類を手渡してくる。それをしっかり受け取った。
集中しなくては。今は仕事中なんだから。
そう思うのだが、この間のキスが頭をよぎって集中を解いてしまう。
…まるで欲求不満みたいじゃない。
思わず口からため息が出た。