気がつけば愛でした



やっぱり言えないよな。高柳とキスしちゃって困っています、なんて。


そう思い、適当にごまかした。

と、その時。



「あ、高柳だ。」

「え…」



貴子が食事のトレーを持った高柳を見る。
静奈はつられて顔を上げ、貴子の声に気がついてこちらを見た高柳と思いっきり目が合ってしまった。


うわっ。


とっさに静奈は目を逸らした。

あのキス以来、まともに会ったのは今日が初めてだったのだ。
どんな顔をすればいいか、静奈はわからない。



「高柳。そこ座りなよ」


貴子がお箸で空いている席を指す。



「あ、いえ…」

「いいよ、もう空いてないだろ。座れよ。」



社長はニコニコと手招きしている。
そんな社長をチラリと見て、「では、失礼します」と席についた。


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