気がつけば愛でした



時間はもう19時を回っている。

ロビーでエレベーターを待っていると後ろから声をかけられた。



「あっ、橘さんだ。この間はどーも。」

「え?」



振り返るとどこかで見たことのある人が。

少し明るめな髪にちょっと幼さが見える人なつっこい笑顔。



「あ!貴子先輩と同期の…」

「そ。この前居酒屋で一緒に呑んだでしょ。覚えてる?」

「えっと…まぁ…」



曖昧に答えてエレベーターに乗る。



「あんまり覚えてない?まぁ、結構酔ってたしね~。」

「すみません」

「いいよ。じゃぁ名前も忘れちゃったかなぁ?」


名前。完全に思い出せなく、素直に頷いた。



「素直だね、なんかいいね。俺、上村保っていうんだ。よろしくー」



そう右手を差し出してくる。なんともチャラい雰囲気の人だが、出された右手をそのままにするわけにもいかず、おずおずと握り返した。



< 65 / 348 >

この作品をシェア

pagetop