気がつけば愛でした
「あの人は見ての通り軽いし、女に見境ないからな。」
軽蔑混じりの声音で自分の先輩をそう言った。
それを聞いてハッとする
「じゃぁ、まさかあの日も…?」
「あぁ。諏訪さんが俺を呼ばないで上村さんに遅らせたらアンタ、完璧食われてたぜ。」
「そうだったんですね…」
そう聞くと、現金な話だが、高柳を呼んでくれて良かったと思う。
上村に何かされるくらいなら、まだ高柳の方がマシである。
ん?マシ?
自分の考えに何か引っかかりを感じた時、エレベーターが一階に着いてしまった。
とたんに静奈は自分が手にしている封筒に気がついた。
上村のお陰で忘れていたが、秘書室に戻って置いてこようとしていたのであった。