気がつけば愛でした
「今出て行ったら上村さんと鉢合わせになる。」
クイッと顎で玄関ロビーを指される。
見ると、その先には家路につこうと歩いている上村の後ろ姿があった。
「どうする?俺は別にいいけど。」
「…私はちょっと…」
正直、上村についてあんな話を聞いた後で会いたくはなかった。
静奈がそう言うとわかっていたのだろう。
高柳はすぐに“閉”を押し、B1を押した。
「えっと…?」
「仕方ないから送ってやるよ。」
そういってポケットから車の鍵を取り出す。
どうやら今日は朝から営業先に直行だったようで、車で来ていたらしい。
「え!?あ、いや、でも…」
戸惑う静奈に高柳は「あぁ…」と振り返る。