恋涙
未来
留学のことはそんなに深く考えず、その年の夏を迎えた。
そして、これが私と結稀が過ごす最後の夏になる。
この年の夏休みは一週間くらい茨城に滞在することができた。
両親は仕事のため、お盆前に私はいつも通り一人で電車に乗った。
茨城県と福島県の境は海が広がっていて、その景色が本当に好きだった。
駅のホームに着くと、結稀が改札の向こうで手を振っていた。
「結稀!」
私はきっぷを駅員さんに投げつけて、結稀に抱きついた。
改札って言っても、当時は自動改札じゃなかった。
駅員さんが一人いるだけ。
その駅員さんも私たちを小さい頃から見てるから、私が駅に着くとホームにアナウンスするんだ。
「宮城からお越しのお嬢様、旦那様がお待ちです。」って。
田舎の駅だから出来ることだよね(笑)
私と結稀が抱き合ってるのを見て、駅員さんは「おいおい、俺バツイチなんだよー。」ってよく言ってた。
今でも、行けばホームに結稀が立って待っててくれてるような気がするんだ。