恋涙

咲は子どもたちを実家に預けているからと言って、その日のうちに帰っていった。



秋人と二人きりになった病室は少し静かだ。



結稀との思い出をたくさん思い出したからか、ちょっとだけ切なくなった。




ベットの上で窓の外をずっと見てた。




結稀もこうやって病室のベッドの上から空を見てたのかな。




「ねぇ、秋人。」



「何?」




「私、早く退院したい。リハビリも頑張る。」



「そうだな。」




「私、いまはまだいろんなこと思い出せないけど、いつかきっと思い出せるよね?」



少しだけ涙ぐむ私を秋人は切なそうな顔で見た。




「きっとすぐに思い出せるよ。」





五年前のあの日から、強くなろうと決めたんだ。




それが本当の笑顔じゃなくても




強く生きようと決めたんだ。





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