恋涙
大学の新年度が始まる少し前、私は退院することができた。
手術の成功する確率は50%だった。
後遺症が残る確率は100%に近かった。
それでも、こうやって生きている。
それがうれしかった。
大学の友達のこともあまり覚えていない。
高校の友達ならなおさら。
これからまたいろんな試練がある。
だけど、またひとつずつハードルの乗り越えていけばいい。
このときはそう思ったんだ。
退院してすぐに私は家から一番近い海に行った。
そこは私と結稀が唯一宮城で過ごした場所。
将来を約束した場所。
一番幸せを感じた場所。
そして、二人で過ごした最後の場所。