恋涙
「そろそろ行かないと電車に乗り遅れるよ。」
私が立ち上がった。
干していた服はすでに乾いていて、熱くなっていた。
上半身ハダカの結稀に服を渡す。
「先に行ってるよ。」
私は自転車を停めている場所に向かった。
二人の距離が30メートルくらい離れたとき、結稀が叫んだ。
「一回しか言わないからよく聞けよ!」
そう言って結稀はぱぱっと服を着た。
「なーに?」
大きな声で私も聞き返す。
「好きだ!」
恥ずかしくて、お互いそんなことを言うことなんてあまりなかった。
「こういうときは、好きだ、じゃなくて愛してるでしょ!」
「そんな恥ずかしいこと言えんけぇ!」
私は笑って、結稀に背を向けた。
でも気付いてたよ。
帰り、駅に向かう途中、あなたの後ろに乗っている私に小さな声で言ったでしょ。
「愛してる。」って。