恋涙

また先生っていうワードが出てきた。



みんなが知っているくらい私にとって大切な人なの?





私はその質問に答えることができなかった。



すると、私の記憶喪失のことを知っているであろう友達が話題を変えた。



だけど、それすらも不自然に思えた。



ただ単に忘れているなら、「こういう人がいたんだよ。」って教えてくれればいい。



でも誰もその話に触れない。





きっと周りは私がいろんなことに気付いてるって知らないから、私も何も聞けなかった。






部屋に帰れば、自分の残した日記がある。



写真がある。




卒業アルバムがある。





だけど、それを開くことはできなかった。




みんなが隠すくらいだから、きっと知らないほうがいいんだって思った。







とにかく元気になったんだから、みんなにつまらないことで心配させちゃいけない。




明るく、いつもの自分に戻るんだ。





みんなが「ホントに元気になって良かったね。」って言うたびに、心のどこかにある絶望感を隠さなきゃいけなかった。


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