恋涙

この小説を書き始めたころは記憶がなかったんだ。



そう考えると変な感じもする。



記憶が戻ったことを周りにも話したけど、誰も先生のことについて聞こうとはしなかった。




でも、それはありがたかった。




考えたくなかったから。





だけど不思議と思いだすこともなかった。




記憶が戻って、私は秋人と別れることになった。




「記憶が戻ったら別れる。」




そういう約束だったから。



きっと記憶が戻ったときは、私の先生に対する気持ちも戻ったってことだと秋人は思っていたんだ。






だけど、実際は先生より秋人のほうが大切だと思う自分がいた。






それは愛じゃない。



ずっと一緒にいる家族愛のようなもの。




それでも、秋人の方が大切だったんだ。




それくらい、自分の中で先生の存在が薄れていた。








それは今でも変わらない。









< 141 / 366 >

この作品をシェア

pagetop