恋涙
「私は母親としてあなたたち二人を小さい頃から見てきたわ。母親のカンで結稀のお嫁さんはあっちゃんだと思ってたから。だから、ちゃんと挨拶に来るのよ。楽しみに待ってるんだから。」
お母さんはそれだけ言うと、電話の向こうで結稀を呼んだ。
しばらくして結稀が電話に出た。
「もしもし。」
「もしもし、私だけど。」
「あぁ。」
「ケータイに電話かけたのよ。」
「ごめん、寝てた。」
「冬休みなんだけど、終業式終わったらそのままそっちに行くね。」
「おう。迎えに行く。」
いつもと同じ。要件だけ話すと私たちはそれ以上なにも話さない。
だけど、その頃から彼の様子が変わってきたんだ。
どうしてこのときに私は気付いてあげられなかったんだろう。
彼が本当に苦しんでいたことを。
一番、一番そばにいたのに。