恋涙

結稀の家に着くと、もう家のまわりは葬式の準備に取りかかっていた。



これは夢なのか?



死んだのは結稀じゃない。


だって今日は青空だもの。




柚也兄ちゃんに支えられて玄関から入ると、結稀のお母さんが立っていた。



「あっちゃん、ごめんね。ごめんね。」



お母さんは私の肩をものすごい力で掴んで、崩れるようにして私に謝る。



「お母さんは何で泣きながら謝ってるの?」



私は柚也兄ちゃんに問いかけた。


その言葉に柚也兄ちゃんも声を押し殺して泣いている。




多分、このとき私はもう気づいてたんだ。




結稀が死んだってことに。




結稀のお父さんがお母さんを支えて立ち上がらせ、「結稀に会ってやって。」と、右奥にある座敷の部屋を指差した。





柚也兄ちゃんが私を支えながら、結稀の眠る部屋に連れていった。




部屋に入ると、咲や秋人が目を真っ赤にして座り込んでいた。




私を見るなりみんな余計に涙を流す。



私は部屋の中央に敷いてある布団の方へ向かった。




< 154 / 366 >

この作品をシェア

pagetop