恋涙
結稀は病気だった。
急性白血病。
気づいたときには病気はすでに進行していて、若いから病魔に体が蝕まれていくのも早かった。
だけど、結稀が死んだのは、彼の体がただ単に病気に勝てなかったわけじゃなかった。
彼の主な死因は・・医療ミスだった。
医者の指示を勘違いした新人のナースが、三倍の量の点滴を結稀の体に入れてしまった。
そして、その指示をした医者が、結稀のお父さんだった。
だから訴えることも、何も出来ずに結稀の死はただそれが運命だった、という話になった。
私がそれを知ったのは17歳になったころだった。
結稀は自分が死ぬとわかっていて、私に連絡をしなかった。
それが彼の優しさだった。
今でも、あのときもっと早く気づいていれば最期の時まで一緒にいられたかもしれないと思う。
でも、彼が私の幸せを思ってそうしたなら、私はそれを受け入れるだけ。