恋涙

火葬が終わるまで、火葬場の和室で待機することになった。



咲だけが、私の背中をずっとさすってくれていた。



周りは知らない大人ばっかり。


待っている間にお酒を飲んだり、笑っている人もいる。


それが許せなかった。



周りの声が二倍にも三倍にも大きくなって聞こえるような気がした。



周りの大人は私をジロジロ見てた。



それを見て、私の噂をしているのはすぐに分かった。






「あの子、結稀くんの彼女だって。もう何年も付き合ってたのよ。」



「将来結婚の約束してたんだって。」



「かわいそうに。あの子はもう結婚なんてできないな。」



「あの歳で未亡人になったようなもんだな。」



「結稀くんも、あの子に会ってなければ最期まで自分のこと考えられたのにねぇ。」





周りの大人が言っていることは、悔しいけど当たっているような気がした。




もう、何も言い返す気力がない。



目を開けると、そこにはきれいな青空が広がっていた。
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