恋涙
深夜2時過ぎ、やっと咲の寝息が聞こえてきた。
私はそっと抜け出して、家の外に出た。
外は夏とは思えないほど冷えきっていた。
空を見ると星が出ている。
公園に行けば結稀に会えるかもしれない。
空を見て、そう思った。
きっとベンチに座って待ってる。
私は走った。
暗闇の中を全力で。
涙は出なかった。
会えると信じていたから。
だけど、もちろん公園には誰もいなかった。
いつも「遅い!」って頬をふくらませていた彼の姿が残像のように頭の中で映る。
公園の中に入ってベンチに手を置くと、いろんな思い出がよみがえった。
ここで喧嘩をした。
ここで仲直りをした。
思い出がありすぎる。
その思いでをかかえてこれから先の未来を一人で歩いていく自信がなかった。
生きている意味がない。
そう思ったとき、私は公園の隣にある川を見ていた。
この川のようにすべて流してしまいたい。
私は公園を出て、川岸に降りていった。