恋涙
死ぬことなんて怖くなかった。
生きているよりずっと。
そんなこと結稀が望んでないってことはわかってた。
だけど、自分の気が済まなかった。
もし私が彼の病気に気づいていて、彼の優しさに気づいていて、ずっと一緒に寄り添っていたら、あんな事故はなかったかもしれない。
「結稀が白血病だって、なんだって、ずっと大好きだよ。」って言ってあげられれば、彼はもっと最期の時を穏やかに過ごせたかもしれない。
もし、私がちゃんと彼を支えていれば、骨髄バンクのドナーだって見つかって、また笑える日が来たかもしれない。
全部、全部私のせいだ。
私はゆっくり川の中へ入っていった。
どうせ死ぬならここがいい。
涙が出ているのか、川の水が顔に飛んだのか、わからなかった。
夏なのに川の水も冷たい。
涙よりずっと冷たい。
たとえ地獄でも、あの世でもいいから彼に会いたかった。
もう一度。