恋涙
しばらく茨城には来たくないと思った。
ここは思い出が多すぎる。
楽しかった思い出が、辛い思い出に変わるくらいなら、もう二度とこの場所に来ない。
そう思って、私は一度も振り返らずに駅まで歩いた。
駅に着くと、そこで待っていたのは樹里だった。
「帰るの?」
樹里も大荷物を持っていた。
「樹里も大阪に帰るの?」
「うん。東京から飛行機に乗って。」
「そっか・・。」
樹里の少し後ろに秋人の姿が見えた。
二人は付き合ってるんだもん、彼女の見送りにきて当然だよね。
「私、秋人と別れたから。」
樹里がいきなり私に告げた。
「えっ・・どうして?」
「まだ気付かないの?秋人が好きなのは私じゃない。小さい頃からずっと。」
樹里の目が真剣になった。
その目にうっすらと涙が浮かんでいるのが見えた。