恋涙
法事も終わり、私はその足で帰ることにした。
長い時間ここにいると、また余計なことを考えそうで怖かったから。
結稀が亡くなってから、私は茨城に来るときは必ず特急に乗ることにした。
何度も見たあの風景を見ないように。
特急だと二時間半で着く。
景色を見る余裕もなくて私には好都合だった。
「お母さん、私このまま宮城に帰るね。」
私が結稀のお母さんに声をかけると、お母さんは私の左手を取った。
「これ、まだしてるの?」
それは、あの海で私が結稀からもらった指輪だ。
「結稀のことを本当にいい思い出だと思える日が来るまで外しません。」
その言葉にお母さんは少し涙ぐんで笑いながら頷いた。
「それじゃ。」と私が玄関でみんなに声をかけると、秋人が「駅まで送る。」と言い出した。
一年前に私は秋人にひどいことを言った。
それを謝らなきゃいけないと思った。