恋涙
私も泣くかと思った。
だけど、涙は出なかった。
「泣かないよ!」
私はそれだけ秋人に言って、改札を通った。
樹里は一回忌にはどうしても用事があると言って来なかった。
その後、私から連絡をして樹里には謝った。
樹里は「そんなこと気にしてないよ。」と笑っていた。
今でも幼なじみたちは私を心配して電話をかけてきてくれたりする。
たまに夫婦喧嘩の愚痴も聞かされるけど、やっぱり嬉しかった。
結稀のことを忘れることはきっと一生ない。
だけど、いつかいい思い出として心のどこかに残せるように。
他の誰かと結婚して、子供ができて、子供に結稀のことを話せる日がくるように。
今は一生懸命生きなきゃいけないと何度も何度も感じてきた。