恋涙
「なんだか元気なくない?」
先生が私に聞く。
「そうですか?」
相変わらずそっけない私の態度。
「受験のことだろう?」
先生が「当たりだろ?」という顔をして私を見る。
「なんで分かったんですか?」
私はやっと先生の方に体を向かせた。
「君は顔に出るから。東京の大学だっけ?」
その言葉に、初めて誰かに進路の相談をした。
「私、小さい頃から忙しい両親に代わって家のことやってきたんです。でも、もし私が東京に行ってしまったら両親の負担が大きいんじゃないかと思って・・。」
喘息のことは言わなかった。
私が私情をここまで教師に話すこともほとんどない。
「へぇ。俺はどっちでもいいと思うよ。」
「え?」
「だってさ、結局どこの大学に行ったって、最終的に君がなりたいっていう職業に就ければ同じでしょ。良い大学に入ったって良い人生が送れるとは限らないんだし・・・。」
もう、補習はそっちの気になっていた。
「俺には君がただ単に家族のことを思って東京の進学を諦めているようには見えないけど。」
その言葉に、この先生は不思議な人って思った。