恋涙

散歩のコースはいつも同じ。


川沿いをずっと歩いて、駅前を通って、最後に祖父の家の近くの公園に寄る。


そこでタローはいつも水を飲むんだ。



朝の小さなその公園には人はいない。



だけど、あの日は違った。




いつものように公園の前に来ると、小さな男の子が地面にしゃがみ込んで何かをしていた。




私は声をかけることもなく、公園の入り口でただ立って男の子を見ていた。




その場から動くことも、声を出すこともなぜか出来なかった。




そんな私を呼ぶかのようにタローが吠える。




さっきまで私に背中を向けていた男の子が後ろを振り返って私の方を向いた。



その顔は逆光で見えない。
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