恋涙

「・・・ちゃん!・・絢ちゃん!」


遠い意識の中で自分を呼ぶ声が聞こえる。



一瞬だけ、周りが見えた。



知紘が泣いてる・・・


その後ろにたくさんの人が集まっている・・・



その中に佐藤先生が見えた。


すごく心配そうな顔を、いまでも本当によく覚えてる。



ごめんね・・・



心の中でそう呟いて、私はまた意識を失った。






そのあと、なんど呼んでも意識が戻らず顔色がどんどん悪くなったため、私は救急車で運ばれた。



受け入れ先が決まらず、救急車が到着してから15分以上も経ってからの搬送だったそうだ。




気がついたらもう病院の処置室にいた。



栄養失調とストレスによる疲労だった。



ベテランの看護師が点滴を打つことができないほど血管が細くなっていて、意識が戻った後に医者から「ちゃんとご飯食べてた?」と聞かれた。




病院には担任の先生と教頭先生が来ていて、私の意識が戻ったことを確認すると学校に連絡を入れていた。




ふと、佐藤先生の心配そうな顔を思い出した。









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