恋涙

結稀も、きっと誰にも言えない不安を隠していたと思う。



人は死と隣合わせになった時、嫌でも自分の無力さを知る。


弱さを知る。



何度も、どうして自分が・・って思った。


でも、責めるものは何もない。


責めるものが何もないから、やりきれない思いを自分にぶつけてた。



自分に向かって「お前が悪いんだ、生まれてくるから。」って。




こんな思いをするために生まれてきたわけじゃない。



それは結稀がいなくなったときにも思った。



私は愛する人を失うために生まれてきたわけじゃないって。




幸せじゃなくてもいい。


ただ普通に・・学校へ行って、友達と話をして、家に帰ってきて家族と話をして・・・




お金がなくてもいい。


欲しいものが手に入らなくてもいい。



ただ、普通の毎日があればそれだけで十分なのに・・・




18歳の私にとって、「幸せ」は他の人が思うものよりもずっとずっと小さいものだったのかもしれない。



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