恋涙
怖い。
もうだめだ。
そう思ったとき、後ろから若いカップルが歩いてきた。
助かった・・そう思った。
男は舌打ちをしながら私をキッと睨んで、走っていった。
その日は予備校の担任の先生にすぐに警察に電話をしてもらった。
警察は現場に行ったらしいけど、そこには私の血痕しか残っていなかったらしく、手掛かりとなるようなものは何もなかった。
数日間警察は現場付近をパトロールしてくれたけど、それも長くは続かなかった。
今まで実際に危害を加えられたことはなかったから、そのときの事件は本当に怖かった。
でも、先生や知紘たちには言えなかった。
これ以上、心配をかけたくなかったから。
それからもストーカーの被害はひどくなる一方だった。
帰り道で襲われそうになったこともあった。
歩いているときに腕をつかまれて誰もいない路地裏に連れて行かれて、制服のシャツを脱がされたこともあった。
そのときは大声を出してカバンを投げつけて逃げて、近くにいたサラリーマンの人に助けてもらったんだ。
そのときに喘息の発作が起きちゃったんだけど、たまたまその人が喘息に詳しい人で、吸入器で早急に対処してくれた。
そんなことも先生には言えないまま、私はいろんなものと向き合って、いろんなものと闘っていた。