恋涙

その日の放課後、私は担当の先生が決まったことを佐藤先生に報告することにした。


本当は他の先生なんて嫌だ。


そう心の中で思っても、そのわがままを通せば大変なことになる。


私は重い気持で提出する小論文を持って先生のところに向かった。



「失礼します。」


ドアを開けると先生がパソコンに向かって作業をしていた。


「おう。小論文持ってきた?」


「うん・・・」


「どした?元気ないね。ここに来るときはいつも元気なのに。」


「どうしてわかるの?」


「アドバルーンが出てるから。すぐ顔に出るしね。」


先生が真面目な顔で私の顔を見た。


「先生・・」


「なに?」


「この小論文で先生に面倒見てもらうのは最後にする。」


「え・・どうして?」


「今日、担当が小野先生に決まったの。」


「・・・希望、出したの?」


その質問に私は首を横に振った。


きっと先生はその方が嬉しいだろうなって思った。


だけど、先生の口から信じられない言葉が出た。


「いいから。俺が見るから。」


そう言って、先生は私の手から小論文を抜き取った。
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