恋涙
小論文を真剣に見ている先生の横顔を私はずっと見てた。
先生だって私たちが噂になっていることは知ってるはず。
「俺が見るから。」
この言葉を先生がどんな思いで言ったのか、それは今でも分からない。
「先生?」
「ん?」
「本当にいいの?先生大変だし・・私、小野先生に見てもらってもいいよ・・。」
「正式な担当は小野先生だからちゃんと挨拶は行ったほうがいいよ。面接はたくさんの先生とやったほうがいい。でも、小論文は俺が見るよ。」
先生は私の顔を見て笑った。
「うん。」
私はそう頷くことしかできなかった。
もしこの時を境に先生と何の関係もなくなったとしたら、いろんなことで悩むこともなかったかもしれない。
それでも、そのときは大切な放課後を先生と一緒に過ごせることが嬉しかった。
だけどやっぱりそれで本当にいいのかっても思った。
もし噂がもっと大きくなったら先生に迷惑をかけるかもしれない。
それに、自分が先生に対して取り返しのつかないくらいの恋をしてしまうのが怖かった。
先生のことは好きだけど、今はまだ憧れだと言って片付けられるくらいかもしれない。
当時はそんなこと思ってたけど、今思えばこの時からもうどうしようもないくらい先生のことが好きだったんだと思う。
私はそれに気づかずに、いつも自分が辛くなる道を選んできたのかもしれない。
だから、今みたいな現実があるのかもしれない。