恋涙

階段を下りると、私は左に、先生は右にロッカーがある。


そこでいったん別れて、お互いの昇降口から下校する。


いつも私の方が少し早く校門に着くんだ。


先生は準備室の鍵を事務室に返さなきゃいけないからね。


校門の近くで待っていると、先生が反対側から歩いてきた。


「遅い。」


私が口を尖らせると、先生は「ごめん。」と笑った。



校門を出て坂を下りるとすぐに信号機がある。

そこで先生は私を待たせた。


先生は学校のすぐ近くに住んでいて、徒歩で通学している。


だから送ってくれる時はいつも私を校門の下あたりで待たせるんだ。



少し高台のところに座って待っていると、先生の車が来てライトで合図をした。



「お願いします。」


そう言って私は辺りに生徒がいないことを確認してから車に乗り込んだ。



「あんまり他の人には言わないでね。」


先生が急にルームミラー越しに私を見ながら言った。


「何を?」


「こうやって送っていってること。」


「言わないよ。」



言えるわけがない。


だって噂になってるんだよ?私たち・・・


でも、言わないでってことは先生も良いことだって思ってないんだよね。


なのに送ってくれるのは、まだストーカーのことを心配してくれてるから?


それとも、病気のことを気にかけてくれてるから?



それは生徒として?



先生の行動がよく分からなくなっていった。


< 237 / 366 >

この作品をシェア

pagetop