恋涙
高校から私の家まで車で約20分くらい。
もう見慣れた先生の車の中で、私は少しだけ緊張してた。
「今日、家までの道教えなくていいから。」
「え?なんで?」
「もう教えてもらわなくても行けるから大丈夫!」
「ホントに~?」
先生は笑いながらそう言って、少しだけ車のスピードを上げた。
その車内で話したことをもう鮮明には覚えていないけど、先生は結局家の近くまできたところで右に曲がるところを左に曲がろうとした。
「先生、そこ右だよ(笑)」
ウィンカーをあげた先生に、私は指で右を差した。
「え、うそ!?あ~残念・・・。」
悔しそうに先生は右にウィンカーをあげ直した。
「別に左でも行けるけど?」
「いや、騙されない。右に行く。」
「別に騙さないし!」
先生は「君は方向音痴だから」と言って笑った。
本当は左の方が近道だった。
でも、少しでも先生と話がしたくていつも右に行ってもらっていた。
それは今でも先生は知らないと思う。
だって先生は・・・
ずっとずっと私の気持ちに気づいていないから。