恋涙
「で、話って何?」
先生は急に本題に入った。
そう言われてすぐに言えるほど簡単な話じゃない。
私はしばらくためらった。
「やっぱり何でもない。別にたいしたことじゃないから。」
沈黙の果てに出てきた言葉だった。
先生はしかめた顔をしている。
「何でもなくはないだろ。最近遅刻してきたかと思えば、早退していなくなるときもある。君の教室の前を通れば、具合悪そうにしてたり・・・。」
私はうつむいて先生の話を聞いていた。
「どうして何も言わないんだよ。いつも明るく笑ってるけど、一人でいるときは辛そうな顔して・・。心配になるだろ。」
「心配かけたくないから・・・。」
私は先生の目をちらっと見た。
「心配するかしないかは俺の自由。」
俺様口調で先生は話す。
「先生が私を心配してくれるように、私だって先生の心配するよ!いつも大変そうだし・・」
いつの間にか口論になっていた。
「もういい。先生に私の気持ちなんて分からない!」
「何も言わなきゃ分かるわけないだろ!」
私は泣きたい気持ちでいっぱいになった。
「そうやって悲観的になってたって仕方ないんだぞ。」
先生の言っていることは私より遥かに正しかった。
正しいからこそ、何も言えなくなった。
そのまま私は何も言わずに準備室を出た。