恋涙
高三の終わり
あっと言う間にその年が終わって、卒業まで残り二か月余りになってしまった。
一月の初め、私は先生にメールをして、中途半端だった願書を見てもらうように頼んだ。
先生は快諾してくれて、私は休日に予備校が終わってから学校に向かうことにした。
予備校の外にでるとすごい大雨。
もちろん自転車で行けるはずもなく、仕方なく学校まで歩いていくことにした。
でも傘をさしていても意味のないくらいの雨で、学校に着いたときには全身びしょぬれ状態だった。
とりあえずジャージに着替えて先生のいる教室に向かうと、先生はいなくてドアにカギがかかっていた。
「えー。最悪。先生忘れてるのかなぁ。」
そんな独り言を言いながら私は自分の教室に戻った。
教室にはクラスメイトが一人いて、彼女も受験勉強をしていた。
その子と他愛もない会話をしていると、ケータイが鳴った。
先生からのメール。
「ごめん、課外が長引いた。今どこ?」って。
ちょっと拗ねてた私は「教室。」って淡泊なメールを返した。
で、少し時間を置いてから先生のところに行った。
「ひどいよ、先生。」
私が少しむっとした顔をすると先生は「ごめん。」と謝って、冷蔵庫からオレンジジュースを出して私にくれた。
願書自体はすぐにOKもらって、あとはいつもどおり雑談してた。
「あーあ。受験って孤独・・・。」
私が先生の隣で机に顔を伏せながら弱音を吐いた。
「まぁそれも人生だから。」
先生は笑ってる。
「もう人生捨てたー。」
「・・じゃあ、俺がもらってやるよ。」
その言葉に驚いて私は体を起こした。
はっきり聞こえてたはずなのに、もう一度その言葉を聞きたかったのか、それとも返す言葉が見つからなかったのか、「えっ?」っという返事しかできなかった。
「なんでもない。」
私の反応に、先生はそう答えた。
この頃からだんだん先生のことが分からなくなっていった。