恋涙
受験を一週間前に控えたある日の昼休み、私は友達と食堂でご飯を食べることにした。
二人で食べていると、佐藤先生と社会科の及川先生が入ってきた。
先生は私にすぐ気付いたようだった。
おせっかいな友達が、先生に「一緒にどうですか?」と誘って、先生と及川先生が私たちの席の方にきた。
先生は私の隣に座った。
なんとなく顔を合わせづらくて、私は友達が先生に話かけているのをただ黙って聞いていた。
友達はいろんな先生に受験グッズをもらったんだって嬉しそうに話してた。
先生もあんまり話はしなくて、黙々とごはん食べてたかな。
及川先生がすごく話に乗ってたから。
友達の話が終わると、先生が席を立った。
そして食器を下げるために私の後ろを通るとき、私にしか聞こえないような声で、「君にはお守りをあげたもんね。」って言ったんだ。
「あ、先生、先生のシャーペン貸して!」
「シャーペン?」
「うん。なんとなく受かりそうなきがする。」
「ははは。ご利益あるかわからないけど、いいよ。」
先生が貸してくれたシャーペンは少し壊れていて、引っかける部分が割れてた。
でも、私は残り一週間の勉強を全部そのシャーペンでやった。
もう少し、もう少し頑張るんだ。
だけど、私の体は限界に近くて、一刻も早く治療をしないと最悪な事態になるというところまできていた。
それでも残り少し。
私は祈るような気持ちだった。