恋涙

「帰ろうかな。」


そう思ったとき、後ろで先生の声がした。


「あれ?どうしたの?」


振り向くと、先生が立っていた。


「先生に最後に挨拶しとこうかと思って。」


そう言った私に先生は少しだけ笑って準備室の中に入れてくれた。



「私、大学行っても頑張るね。」


「うん。君なら大丈夫だよ。きっといい友達にも出会える。」


「ありがと。でも女の子ばっかりだから先生みたいに結婚逃しそう(笑)」


「じゃあ、俺の大学行けばよかったんじゃない?男ばっかりだからきっとモテモテだよ(笑)」


「誰も好きにならないよ、私なんか。」


私は先生の顔を見ずに笑った。



「・・・俺は好きだよ。」



その言葉に一瞬耳を疑った。


返す言葉もなくて、私は無言だった。



そのとき、他の生徒が先生と写真を撮るために準備室に入ってきた。



私はその言葉に何も言えないまま、「帰るね。」と言って立ち上がった。


先生は「え・・あ、うん。」っとしどろもどろな返事をしていたけど、あのとき先生が何を考えていたのかは全然分からなかった。


それに自分の気持ちも。



本当はこのとき、私は先生に自分の気持ちを伝えようと思ってた。



先生のことが好きだって。



だけど、その言葉はいろんなものに遮られた。


伝えたかった言葉を伝えられないまま、私は卒業式を迎えたんだ。



そして先生と準備室で話したのはこれが最後だった。


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