恋涙
会場の中にはもうほとんど生徒の姿はなかった。
後片付けをしている受付の先生たちが残っているだけだ。
自動ドアをくぐって中に入ると、赤間さんの姿があった。
「あ、赤間さん!佐藤先生見なかった?」
タキシード姿の赤間さんは私の必至な姿に何かを感じ取っていたような気がした。
「え・・見てないけど・・。」
「そっか・・・。」
「諦めないで早く行け!まだ残ってるかもしれないぞ!」
赤間さんは私の体の向きを変えた。
「はい!」
私も力強く返事をして、また走りだした。
館内を走りまわりながら一年間の思い出が走馬灯のようによみがえる。
探し回りながら私は泣いてた。
走って走って走って・・・
先生に一目でも会いたくてずっと探した。
それでも先生は見つからなくて、私は階段の上で腰をおろして頭を抱えて泣いた。
最後の最後まで自分に素直になることができなかった。
いつでも言えると思っていた言葉は、いつまでも言えない言葉になってしまった。
会いたいと思えば思うほど、いつもどこか空回りしていた。
このときもし自分の気持ちを伝えていたら、また違った今があったのかもしれないね。