恋涙
卒業式の夜、先生からメールがきた。
「やっぱり今日あえなかったね。」って。
それから「卒業おめでとう」って。
ケータイを握りしめて私は泣いた。
何も言えなかった自分。
いつでも言えると思ってた言葉。
「ありがとう」より「好き」のほうが短い言葉なのに、「好き」という言葉にたどり着くまではすごく長い。
すごく長い夢を見ていたような、いまではそんな気分。
それから私が先生に残した手紙。
先生はその手紙を読んだとき、泣きそうになったし、しばらくその場から動けなくなったって言ってくれた。
私たちの一年はお互い「ありがとう」で終わった。
今でもその気持ちは変わってないけど、やっぱりあのとき私が先生に会えていたら何か違った今があったのかもしれないって思うことはあるよ。
それでも今は自分にできることを一生懸命やるだけなんだ。
いつか自分の夢を叶えて、笑顔で先生に会える日がくる。
「高校生のころ、実は先生のことが好きだったんだよ。」って遠い目で言える日がくる。
そう信じて私は新しい道の扉の前まで歩いてた。
先生のことが思い出になるまで、なるべく思い出さないようにしながら。
二人で一生懸命直した先生のメールアドレス付きの志望理由書、先生からもらったお守り、先生からもらったラクダのマスコット、写真、そして連絡を取り合っていた当時のケータイ電話。
すべてを箱にしまって思い出から目を伏せた。
そうすることでしか前には進めそうになかったから。