恋涙
十二章
旅立ち
春休み中、一度だけ麗と二人で学校に行った。
離任式の日だ。
赤間さんが別の高校に行くことになったんだ。
卒業式の日に撮った写真を渡したり、お礼を言ったり・・・
本当に赤間さんがいなかったら先生に手紙を渡すことさえできなかった。
最後に赤間さんと話したとき、赤間さんは先生ともう一度話さなくていいのかって私に聞いた。
私はただ頷いた。
「もう先生からは卒業。」
私が言うと、赤間さんは私の頭を撫でた。
離任式が終わって帰ろうと麗と二人で廊下を歩いている時、偶然にも先生と会った。
あんなに探してもあの日会えなかった先生が目の前にいる。
だけどもう遅いんだよ・・・
心の中でそう思ってた。
「あ・・・元気?」
先生はそう私に言った。
「はい。」
そう答えるので精一杯だった。
「それじゃ。」
そう言って歩き出したのは私。
麗は何も言わなかった。
離任式の帰り道、私は校門を出ても一度も校舎の方を振り向かなかった。
辛くなるの分かってるから。
もう二度とこの校舎に来ることはないってそう思ってたから。