恋涙

新学期が始まる一週間くらい前、私は大学の友達のユリとドライブに行った。


久保さんの問題でもやもやしてたし、仕事疲れもあって急に自然いっぱいの場所に行きたくなった。


そのころユリは彼氏との関係に悩んでいて、車内ではそんな話しばっかりだった。


私は久保さんのことを誰ひとりにも話していなかったし、今さら一年くらい前から気になってる人がいたんだっていうのもおかしな話だと思った。


別に友達に隠してたわけじゃない。

冷めた言い方をすると、言う必要がなかった。


まぁ言い方を変えればただ単に気になってただけで、別に好きとかそういうのでもないのに周りにどうこう言うあれでもないなって思ってたから言わなかった。


「気になってる」=「好き」じゃないでしょ?


それに女の子ってほら、「気になってる」って周りに言うと極端に「好き」に変化しちゃうから。



だから自分の気持ちがわかるまで誰にも言わなかった。


だけどこのとき初めてユリに久保さんの話をしたんだ。


「あのね、私も実は気になってる人がいるんだ。」


「え!?誰?」


ユリはすごく驚いた顔をした。


「バイト先の常連さんなんだけど、上司の人が仲介してくれて番号とかも教えてもらっちゃったんだよね。」


私は大谷さんが久保さんに電話をかけたときのことを細かくユリに話した。


「それ電話かけなよ!番号知ってるのにもったいない!」


「やっぱりそうなのかなぁ・・・」


私はどうしようかすごく迷った。


好きな人の連絡先を知らないユリにとっては私の立場がすごくうらやましく思えるらしく、そう言われると私も電話をかけなきゃいけないような気がしてならなかった。


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