恋涙
約束の日曜日、九時ごろに久保さんから電話が来た。
「あ、おはようございます。今日10時半頃にご自宅の近くのコンビニ待ち合わせでいいですか?」
「わかりました。では。」
準備なんてとっくに終わってた。
五分前に私は家を出て、待ち合わせのコンビニに向かった。
コンビニが見えるところまで来ると、久保さんの車が停まっているのが分かった。
コンビニの目の前で信号待ちしている私の姿を見つけると久保さんはそわそわしてた。
それがわかって、私は少し下を向いて笑った。
信号が青になって私が久保さんの車に近づいていくと、久保さんは車から降りてきて頭を下げた。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
そのとき、初めて久保さんの私服を見た。
「スーツ姿と全然印象変わりますね。」
「そうですか?及川さんも雰囲気違いますね。」
そんな話をして、久保さんは片手で助手席の方に手を伸ばして誘導してくれた。
「どうぞ。」
そう言って久保さんは助手席のドアを開けてくれた。
すごいな、やっぱり大人だなって思った。
車の中はすごくシンプルで、ドリンクホルダーには同じお茶が二つ並んでいた。
「じゃ、行きますか。」
運転席に乗り込んだ久保さんはシートベルトをして車を発進させた。
二人で出掛けるには大きすぎる車。
仕事柄なのかなって思った。