恋涙
「大学は今、忙しいんですか?」
久保さんは運転するためにメガネをかけながら話しかける。
「今はまだそんなに忙しくないですね。」
そんな会話をしながら久保さんがどこに向かおうとしてるのか気になった。
「今日、どこか行きたいところありますか?」
「いえ、お任せします。」
「分かりました。」
久保さんは私の答えをあらかじめ予想していたかのようにまっすぐ高速に向かった。
向かった先は自然の豊かな公園。
四月の空はとっても澄んでいた。
散歩コースがあって、湖も見える。
「いいところですね。」
私が空を見ながら言った。
「及川さんはこういう自然いっぱいのところが好きなんじゃないかと思って。」
「どうしてそう思うんですか?」
「空・・・」
「・・え?」
「空を見てますよね、よく。お店でお会いするときも、この間お店の前で会ったときも、今日、待ち合わせの場所に向かって歩いてくるときも。」
「よく見てますね。」
「なんか自然のものを見るときに優しい顔をするような気がしたんで・・・。」
久保さんは自分が思っている以上に私のことを見てくれてたんだって思った。
「好きですよ、自然がいっぱいの場所。空を見てると安心しませんか?」
「及川さんって・・・変わってますよね?」
「それ、どういう意味ですか?(笑)」
「いや、かわいいと思いますよ!」
そう言って久保さんは笑った。