恋涙
「お待たせしました。」
私が声をかけると久保さんは振り返って少しだけ笑った。
「及川さんが空をいつも見ている理由がなんとなくわかったような気がします。」
「え・・?」
「及川さんはきっと優しい人たちに囲まれて育ったんでしょうね。そんな感じがします。」
「そうですか?」
「ええ。・・・及川さん。」
「はい?」
「もう一度お願いします。僕とお付き合いしていただけませんか?」
「久保さん、今日は私が久保さんに話したいことがあってお呼び立てしたんですが。」
「えっ・・あぁ!そうでしたよね!すいません、つい・・・」
久保さんは口を押さえて頭を下げた。
「もういいです。私の用件も久保さんと同じですから、今の久保さんの言葉に返事をすればいいんですよね?」
「え・・・それじゃあ・・」
「ただし付き合うのは二週間です。その後お付き合いしていくかどうかは二週間後に決めさせてもらえませんか?」
「それはまた一体どうして・・・」
「私たちが付き合っていくにはたくさんの障害があると思うんです。学生と社会人というだけでもすれ違いが多いのに、年齢だって16も離れてます。すぐに全ての答えは出せません。時間をいただけませんか?」
久保さんは私の顔をじっと見た。
「・・・分かりました。あなたにはきちんと僕を見てほしい。だから待ちます。」
こうして私たちの二週間が始まったんだ。