恋涙
「すいませんでした。」
彼は助手席に私を乗せて自分も車に乗ると発進させるなり私にそう言った。
「いえ・・お母さんの言うことが最もだと思います。まだ学生の私には結婚なんて考えられません。それが今でも、何年先でも。」
そう言った瞬間、目の前の信号が赤になって車が止まった。
「でも私は本気です!あなたが何歳であろうと本気なんです。」
車が止まって、久保さんはまっすぐに私を見た。
「私も久保さんが好きです。二週間本当に楽しかった。だから、これからもずっと一緒にいたいって今日はそうお答えしようと思ってました。でも、今結婚しなければお母さんに認めてもらえないのであれば全てなかったことにしましょう。」
その言葉に久保さんは黙ってしまった。
沈黙の時間ばかりが流れてあっという間に自宅についた。
シートベルトをはずして私は久保さんのほうを見た。
「ごめんなさい。これが私の答えです。今日はありがとうございました。」
久保さんは何も言わなかった。
私が車を降りて一礼すると、久保さんは車を発進させた。
私は久保さんの車が見えなくなるまでずっと目で追っていた。
悲しくなって涙が出た。
自分の考えが久保さんほどしっかりしてなかったように思えたから。
16歳も年の離れた人と付き合うことを私は少し甘く見ていたんじゃないか・・・
そう思うと恥ずかしい気持ちさえ感じた。
だけど好きだった。
もうどうしようもないくらい好きだった。