恋涙
全てのお客様のお見送りを終えた後輩が厨房に戻ってきた。
「及川さん、いいんですか・・?帰っちゃいましたよ?」
「うん・・・わかんない。」
「行ってください!片づけは私がやりますから!」
後輩は洗い物をしていた私の手を止めて久保さんを追いかけるように促した。
「・・・行く!あとお願いね!」
私は急いでロッカーにケータイを取りに行って久保さんに電話をかけた。
四回くらいコールが鳴ったところで久保さんが出た。
「もしもし。」
「久保さん、会いたいです。」
私はそう一言だけ伝えた。
「私も会いたいです。今から戻ります。」
久保さんはそう言ってくれた。
「いえ、私が会いに行きます。久保さん飲んでるでしょう?」
私はそう言って半ば強引に電話を切った。
その時にはもう車に乗っていたから。
私は電話を切ってすぐに車を発進させた。
まだ着物のまま、着替える余裕もなく。
久保さんのアパートに着くと、久保さんは駐車場で待っていた。
車を降りると久保さんは近寄ってきて私を抱きしめた。
「久保さんが好きです。」
私はそう一言言った。
「私もです。これからのことは二人で決めていきましょう。後悔したとしても今目の前の幸せを大切にしたい。」
その言葉がとっても嬉しかった。