恋涙

別れてしまったのかどうなのか、私はその答えを知るのが怖くて連絡ができなかった。


もちろん久保さんからも連絡は来なかった。


大学の友達には久保さんと別れたと伝え、自分の中ではいっそ終わらせてしまおうかと思った。



自分の中でもどうしていいのかわからなくなって、すごく悩んだ。



これからどうしたらいいのか、本当に別れるのであればきちんと話し合いたいと思っていた頃、お店の予約帳に彼の会社の名前で予約があった。


今回は少人数の予約だったけど、もし久保さんが来たらどうしようって思った。



予約の時間になって全員が揃い、その中に久保さんの姿はなかった。



なんとなく心のどこかでほっとしながら私は仕事をしてた。


だけどやっぱり彼の会社の社員さんたちがいるだけで久保さんのことを考えてしまう時間が多かった。





その部屋の料理を出している時だった。


お酒も入り、気分が盛り上がってきた社員さんたちが私が自分の耳を疑うような話をしていたのを偶然聞いてしまったんだ。



「そういえばさ、久保さん急遽転勤決まったらしいね。」


その時のメンバーは誰も久保さんと私が付き合っていることを知らず、たまたま・・本当に偶然私の前でそんな話を始めたんだ。



「あ、やっぱり久保さんの転勤の噂って本当なんだ。」


「でも久保さんって前から希望してたんじゃなかった?」


「いや、そこまで詳しく知らないけど。」


「あの人はでも仕事に一直線タイプだし、家庭もないから出世は早いと思ってたよ。」


「久保さんって結婚してないんだっけ?」


「確かまだ独身だよ。交際してる女性はいるみたいだけど。」


「じゃあこの機会に結婚かな?」


「多分そうなるか・・。」



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