恋涙
閉店の時間になるまで大場さんは店にいて、他のお客さんが帰ったところで大場さんも店を出た。
最後のお客様が帰ったところでラストオーダーの時間を過ぎているようであればお店を閉める。
大場さんはそれを知っているから、最後にお店を出た。
それから20分程度で店を閉めて、私も着替えて店を出た。
「すいません、お待たせしました。」
私は店の外で待っていてくれた大場さんに声をかけた。
「ここで話すのもなんですから、どこか飲みにいきませんか?」
大場さんの一言で、私たちは近くの居酒屋に入った。
「で、話しってなんですか?」
大場さんは頼んだ焼酎を片手に少しうつむいていた。
「久保さんのことですよね?」
「まぁ、久保以外の用事だったらちょっと大変だよね。」
「転勤のことですか?」
私は単刀直入に聞いた。
「えっ・・・知ってたの!?」
その一言で私の中で打ち消しにしていた彼の転勤説が確実なものになった。
「はい。他の社員さんたちが噂していたのを偶然聞いてしまって・・」
「ってことは久保から直接聞いたわけじゃないんだ?」
「はい。久保さんとは・・・ちょっと・・・」
「うん、聞いてる。悩んでたよ、あいつ。転勤のことを絢ちゃんになかなか言えなくて。」
大場さんは何度も焼酎を口に運んでいた。