恋涙

「どこに転勤するんですか?」


私はふと、彼の転勤先を知らないことに気付いた。


「え・・・驚かないで聞いてね。」


そう言って大場さんはまた少しうつむいた。


私は真剣な目で大場さんをまっすぐ見ていた。


「・・・マレーシアだよ。」


その場所は私の想像を遥かに越えていた。



やっぱりその時点での私の予想は47都道府県内だったから。


まさか海を越えて遠く離れた国に行ってしまうとは思っていなかった。




「本当は久保本人が絢ちゃんに言うべきだと思ったんだけど、このままだと本当に二人がすれ違いのまま離れてしまうんじゃないかと思って。」



私はもはや言葉を発する気力がなかった。



「絢ちゃんと久保はただでさえ壁が多いんだから、ちゃんと話し合わないと絶対後悔するよ。」



大場さんの言葉はすごく胸に響いた。




私は放心状態になって、そのあとどうやって家に帰ったのか全然覚えてない。




ただ玄関の前で立っていられなくなって、子どものように声をあげて泣いた。



不安で・・


怖くて・・・


これから先の未来が全く見えなくなった。
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