恋涙
結稀は私の前まで走ってくると、ひざに手をあてながら息を整える。
「お前、夕方に散歩してたっけ?」
「何となく考え事があって、タローに付き合ってもらってた。部活の帰り?」
「おう、俺天才だけぇ。一生懸命頑張ってレギュラーになる。で、お前は何の考え事してた?」
結稀は私の隣に座って私の顔を見る。
「結稀のせいだよ。」
少しふてくされながら言った。
「えっ・・俺なんかしたっけ?」
結稀は下を向いて考える。
この人を私は六年間見てきた。
いつもこうやって隣にいるのに、私はどうして自分の気持ちが分からないんだろう。
それが分かるほど私は大人じゃなかった。