恋涙

ユリと別れて、帰りの電車の中で私は考えていた。


今彼と別れるのか・・・


それとも最後まで思い出を作るのか・・・



そんな答えもうとっくに出ていた。


彼と最後まで一緒にいる。


最後は私が笑顔で彼を見送る。


もう一分一秒でも時間を無駄にしたくない。



私は電車の中で決意した。


そして地元の駅で降りて彼のアパートに迷わず向かった。




駅の改札を出て、すぐにタクシーをつかまえた。


乗ってすぐにアパートの住所を伝えた。


その車内で心の中で思った。


「もう迷わない」と・・・。



アパートの前について、私はアパートの下から彼に電話をかけた。


「もしもし。」


低い声で彼が電話に出た。


「今日は私があなたに話したいことがある。」


その言葉に久保さんは「うん。」とだけ言った。



アパートの下から二階の彼の部屋を見ながら話していると、ベランダから彼が姿を現した。



「やっぱりいると思った。」


下にいた私を見つけて久保さんがそう言った。


「なんで分かったの?」


私は笑っていたけど、なぜか涙が出ていた。


「分かるよ・・・すぐ。」
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