恋涙

「明日休みだからどこか行こうか。」


帰ってきてスーツを脱ぎながら彼が私に言った。


「え?本当?」


私は彼の脱いだスーツをハンガーにかけながら彼を見た。


「うん、ただし!」


「ただし・・何?」


「行き先は秘密です。」


彼が今度はネクタイを解きながら人差し指を立てて口にあてた。



「なんで秘密なの?」


「まぁいいから、いいから。さ、ご飯食べよ。」


秘密・・と言われるとすごく気になったけど、久しぶりに彼が休みで一緒に出かけられるのをすごく嬉しく思ってた。



次の日の朝は快晴。


絶好のお出かけ日和だった。


「おーい。早く支度しろよ。早めに出るからな。」


まだエプロン姿で朝食の片付けをしている私に久保さんが言う。


「えー、でもせっかく天気いいから洗ったシーツと布団干したいんだけど。」


洗い物をし終わった私はエプロンの裾で手を拭きながら彼に言った。


「シーツなんて夜に乾燥機室に行ってやるよ。布団なんて大丈夫だから、ほら早く!」


納得いかない顔をする私の背中を彼は両手で押して、私に支度するように言った。


「なーにをそんなに急いでるんだか・・。」

私はエプロンを外して支度を始めた。


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